物忘れは認知症の初期症状です
しかし、同じ「物忘れ」でも、認知症の初期症状や脳疾患から起こる場合もあるので注意が必要です。いずれも、早期の対応が必要ですが、偶発的・加齢による物忘れと認知症の初期症状としての物忘れを自分自身で見分けるのは非常に難しいとされています。ご自身で、最近物忘れが酷くなったと感じたとき、あるいはご家族に指摘された場合は、早めに当院にご相談ください。
加齢・認知症・脳の病気による「物忘れ」
加齢による物忘れには、以下のような特徴があります。
- 忘れっぽくなっていることを自分で理解している
- 体験そのものは覚えているけれど、その中の細部を忘れている
- 日常生活や長い年月をかけて覚えた行為などには支障がない
- 物事の適切・不適切の判断はできる
認知症による物忘れ
認知症が発症すると、次第に日常生活において支障をきたし、記憶力や思考力のほか、理解、計算、学習、言語、判断の能力が落ちていきます。加齢による物忘れとは違い、記憶がすっぽりと抜け落ちてしまうのが特徴です。「ほら、あのときこうだったでしょう」と指摘を受けても、その出来事自体を忘れてしまいます。健康な人でも起こり得ますが、忘れる頻度が高い場合は、認知症のサインである可能性が高いと言えます。
認知症による物忘れは以下のような特徴があります。
- 忘れっぽくなっていることを自覚できない
- 体験した出来事自体を忘れてしまっている
- 日常生活や長い年月をかけて覚えた行為などに支障が生じる
- 物事の適切・不適切の判断ができない
脳疾患による物忘れ
加齢による物忘れでも、認知症の初期症状でもなく、脳疾患の症状の一つとして起こる物忘れがあります。慢性硬膜下血腫や脳腫瘍、正常圧水頭症などの脳疾患が原因として挙げられます。これらはMRI検査やCT検査によって発見することが可能であり、適切な治療により症状が改善する、いわゆる「treatable dementia-治療可能な認知症」として大変重要な疾患です。
物忘れ以外に以下のような症状がある場合は、特に注意が必要です。また、疾患によって物忘れに伴う症状も異なります。
慢性硬膜下血腫
- 意欲低下
- 言葉が出にくい
- しびれ・麻痺
- 上記のような症状前に転倒して、頭部を打っていた
脳腫瘍
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 視野異常
- 身体の片側の麻痺
- 痙攣
正常圧水頭症
- 動作が緩慢
- 歩行時のふらつき、歩行障害
- 尿失禁
上記の疾患以外に、有名なアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、レビー小体型認知症などの認知症もありますが、これらの認知症は劇的に症状の改善を図る治療が困難な認知症です。そのような中でも、さまざまな生活支援や病状の進行を遅らせる治療薬の適応について検討していきます。